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院長コラム

2009-06-10

少子高齢化社会について(7)若者にみる肥大化(ひだいか)した自尊心(じそんしん)と劣等感(れっとうかん)を考える

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冬の鯉の内臓もみなわが胃にてこな(消化)されにけりありがたや

死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ(蛙)天に聞こゆる

斉藤茂吉

茂吉は、山形県上山市に生まれ、小学校卒業(12歳)後、東京の親戚に身を寄せた。後年、著名な歌人となり、精神科医となった。子ども時代の食生活が、鯉を好物にさせたに違いない。また処女歌集「赤光(しゃっこう)」には、故郷に残した母への思いが切々と歌われている。

幼少児期から学童期の生活が、その人の人生に色濃く影響することを否定できない。それは、食べ物の好き嫌い(味覚を決める舌の味蕾(みらい)細胞(さいぼう)の形成)、美的感性、形態知覚、色彩感覚、音感など、眼、耳、鼻、舌の感覚細胞の成長に関係していることにもよる。

また手先の器用さや運動神経の発達もまた影響を受けている。そして、挨拶・着衣・食事などの作法・習慣は、親(養育者)と言葉と行いのキャッチボールをすることによって身につける。安心という情緒の器である家族に受け入れられるために、子供は努力をする。

思春期は、自分が家庭・地域社会から身につけた基本的生活習慣を来るべき新しい広い世界に旅立つための準備期間ともいえる。様々なことに対して、トライアンドエラー、失敗と成功を繰り返していくことである。

成功体験は「良い子」のイメージを自分で大きくする。失敗は「悪い子」のイメージを大きくする。「良い子(福)」「悪い子(禍)」の経験は、禍福(かふく)糾(あざな)える縄(なわ)の如(ごと)し、つまり「良い子」と「悪い子」の二本のロープが交互に絡んで一本の縄になって行くように、こころを成長させる。

しかし厳し過ぎる環境の場合、例えば、お勉強のテストでは、「95点をと取って喜ぶ子に、それで満足してはいけない。100点を取った子は、100点以上を取れる可能性があるのだから。」「悪い子とは遊ばないように、友は良い子を選びなさい」と言われる場合、親に素直な子たちは、悪い子の自分を「本当の自分ではない」と思いこみ、良い子が「本当の自分だ」と考えがちになる。ここに、何故「良い子」のイメージのまま、「よい大人」になりにくいかを解く鍵がある。

去年の6月8日、秋葉原で無差別殺傷事件が起きた。あれからもう1年がたった。私は、若者の心を理解できないまま過ごした。この間去年の暮れに、元厚労省事務次官の殺人事件がおきた。そして、5月に、中央大学の指導教授殺人事件が起きた。

共通項として、(1)家族が貧困家庭でないこと、(2)大学を卒業してIT技術を身につけていること、(3)仕事を転々としていること、(4)コミュニケーション・スキルが少々弱いこと、である。

臨床精神医学の経験からみると、この4点を抱えている青年のイメージは、精神病理として問題にならない。むしろ現在の青年像の平均を越えている。殺した理由の差異である【誰でもよかった】と【この人でなければならない】という手がかりから考えてみたい。

もし、【悪い子は本当の自分でないし、良い子の自分は何に対しても自信を持っている】と仮定してみよう。そんな気持で、思春期を越えた青年たちは、社会に出てからの失敗の体験の連続は過度の劣等感を持ち、成功の体験の連続は過度の自尊心(プライド)を持つに違いない。

青年たちが、この肥大化した劣等感と肥大化した自尊心を手に入れたら、今の日本の高度な情報化社会に適応できずに、身をもてあますのではないか。肥大化した劣等感は、不安と無力感と孤立感を深め、人生の将来に絶望しやすい。そして自分の立場や考え方に迷い、【木を見て、森を見ず】のような状況に追い込まれるしかない。

本来、そのような精神的にどん底の時に、救いになるべき自尊心が肥大化している場合、他人の意見を聞くゆとりを失い、すべてが自分のせいか他人(ひと)のせいにして、行動も極端になりやすくなる。

目の前にいる他人は、自分の進む道にある障害物に見えて、消したら前に進めると考える。従って誰でもよかったということと、この人でなければならないという動機は、事件を起こした青年たちにはその動機の違いに意味をもたないのではないか。

一連の死傷事件の青年心性を、このような角度から見ると少しは理解できないだろうか。

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